世界を救う郵便局:第7話「希望の手紙と新たな旅立ち」

ファンタジー

前回の話

世界を救う郵便局:第6話「闇の勢力との対決」
前回の話第6話「闇の勢力との対決」最後の手紙を持って外に出ると、街が変貌していた。建物が透け始め、人々の姿が揺らいでいる。古い世界が、限界を迎えていた。「急がないと」田中が走り出すと、前方に黒い壁が立ちはだかった。「やはり来たか」闇の配達員...

第7話「希望の手紙と新たな旅立ち」

目を覚ますと、田中は郵便局にいた。

しかし、何かが違う。窓から差し込む光が優しく、空気が澄んでいる。

「おはよう、新しい世界の配達員」

局長が微笑んでいた。その姿が、少し透けて見える。

「局長……まさか」

「私は前の世界の管理人。君に引き継ぎをしたら、私の役目は終わりだ」

田中は悟った。局長もまた、届けられるべき手紙だったのだ。

「でも、私一人では」

「大丈夫。見てごらん」

外を見ると、新しい配達員たちが集まってきていた。かつて闇の勢力だった者たちも、配達カバンを持っている。

「届けられなかった想いを知る者こそ、良い配達員になれる」

局長の体が、完全に光になっていく。

「最後に一つ。君宛ての手紙がある」

一通の手紙が、田中の手に渡された。差出人の名前を見て、田中は息を呑んだ。

それは、田中自身からの手紙だった。

『未来の自分へ』

震える手で開くと、短い文章が書かれていた。

『世界を救うなんて大げさなことじゃない。ただ、一通一通、心を込めて届ければいい。それが積み重なって、世界は回っている。

P.S. 給料は上がらないけど、やりがいは保証する』

田中は笑った。涙混じりの、晴れやかな笑顔。

「相変わらずブラックだな」

局長は最後に言った。

「郵便局は永遠に不滅だ。手紙がある限り」

そして、光となって消えていった。

新しい朝。
新しい世界。
新しい手紙たち。

田中は配達カバンを背負った。カウンターには、すでに配達待ちの手紙が山積みだ。

「さて、仕事を始めるか」

ドアを開けると、新米配達員が慌てた様子で駆け込んできた。

「大変です! 時計が逆回りして、切手が勝手に……」

「ああ、それは正常だよ」

田中は優しく言った。かつての自分を見るような気持ちで。

「この郵便局は特別なんだ。でも心配しなくていい。必要なのは、手紙を届けたいという気持ちだけ」

新米配達員の目が輝いた。

「はい!」

世界を救う郵便局の、新しい一日が始まった。

手紙は今日も世界を巡る。
希望と共に。

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