世界を救う郵便局:第5話「世界の秘密と封印」

ファンタジー

前回の話

世界を救う郵便局:第4話「消えた手紙の行方」
前回の話第4話「消えた手紙の行方」三通目の手紙を持って劇場に向かう途中、田中は異変に気づいた。手紙が、消えた。「えっ?」配達カバンを探っても、どこにもない。慌てて地図を広げると、光が乱れている。「盗まれた?」その時、背後から声がした。「その...

第5話「世界の秘密と封印」

五通目の手紙『真実を知る者へ』を届けた後、田中は郵便局に呼び戻された。

局長が深刻な顔をしている。

「残り二通になったところで、話しておくことがある」

「何です?」

「この世界の真実だ」

局長は、郵便局の奥にある扉を開けた。そこには巨大な手紙が封印されていた。

「これは?」

「世界の設計図だ。正確には、世界を記した手紙」

田中は息を呑んだ。

「つまり……」

「そう。この世界は、誰かが書いた手紙なんだ。そして百年ごとに、書き直される」

七つの手紙は、その準備だった。古い世界の住人を、新しい世界へ移すための切符。

「でも、なぜ書き直す必要が?」

「手紙も古くなれば読めなくなる。世界も同じ。放っておけば、意味が失われ、崩壊する」

田中は六通目の手紙を見た。『世界を書く者へ』

「まさか、これは……」

「君宛てだ」

震える手で封を開ける。中には、真っ白な原稿用紙とペンが入っていた。

「私が新しい世界を書くんですか?」

「配達員は、ただ届けるだけじゃない。時には、自分で手紙を書く必要もある」

田中は原稿用紙を前に、途方に暮れた。

「何を書けば……」

「君が届けてきた手紙を思い出してごらん。記憶、愛、希望、許し、真実。それらすべてが、新しい世界の要素になる」

田中はペンを取った。最初の一文字が、震えている。

『拝啓、まだ見ぬ世界の住人たちへ』

書き始めると、不思議なことが起きた。これまで出会った人々の顔が浮かぶ。届けた手紙の温もりが蘇る。

彼らの物語を紡ぎながら、新しい世界を描いていく。

「これでいいのか……」

不安もあった。一介の郵便配達員が、世界を書くなんて。

だが、局長は優しく言った。

「完璧な世界なんてない。大切なのは、手紙が届く世界であることだ」

田中は書き続けた。窓の外では、紫色の空が金色に変わり始めていた。

最後の一文を書き終えると、手紙は自然に封筒に収まった。

宛名は『すべての人へ』

「さあ、最後の配達だ」

七通目にして最大の手紙。世界そのものを届ける配達が、待っていた。

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