日本昔話新解釈:第6話「妖怪たちの反乱」

前回の話

海の守護者・乙姫の試練を受けるため竜宮城を訪れた山田博士。そこで海洋汚染の現実と、人類が選んだ未来の姿を見せられる。世界中の海の守護者たちの前で、人類を弁護することになった。

第6話「妖怪たちの反乱」

山田は深呼吸をして、守護者たちに向かって語り始めた。

「我々人類は、確かに過ちを犯しました。欲望のままに自然を破壊し、あなたがたとの契約を忘れました。その罪は、決して許されるものではありません」

守護者たちは静かに聞いていた。

「しかし、」山田は続けた。「人類の中にも、自然を愛し、共生を願う者たちがいます。子供たちは、まだ海の美しさに感動し、山の神秘に心を震わせます。彼らに、もう一度だけ機会を与えていただけないでしょうか」

『甘い言葉だ』

一人の守護者が立ち上がった。河童のような姿をしていた。

『我らも、かつては人間を信じていた。しかし裏切られ続けた。もはや信じることはできない』

次々と守護者たちが立ち上がり、人類の罪を糾弾し始めた。山田は圧倒されそうになった。

その時、竜宮城が激しく揺れた。

『何事だ?』

乙姫が叫んだ。すると、一人の使者が駆け込んできた。

『大変です!陸の妖怪たちが反乱を起こしました!』

場が騒然となった。山田も驚いた。妖怪たちが反乱?

『詳しく話せ』

使者の報告によると、日本中の妖怪たちが一斉に姿を現し、人間たちを襲い始めたという。ただし、殺しはしない。人間たちを「教育」しているというのだ。

河童は水道を止め、天狗は電線を切り、座敷童は家から人を追い出していた。現代文明の利器をすべて使えなくし、人間たちに「自然と共に生きる」ことを強制していた。

『愚かな…』

乙姫がつぶやいた。

『妖怪たちは、我々と違って人間の近くで暮らしてきた。だから情が移ったのだろう。しかし、そのようなやり方では…』

山田は気づいた。これは妖怪たちなりの、人類への最後の警告なのだ。守護者たちが去る前に、何とか人間たちを変えようとしているのだ。

『我々も地上へ行く』

乙姫が決断した。

『妖怪たちの行動は認められない。しかし、彼らの想いは理解できる。人類よ、これが本当に最後の機会だ』

海が再び割れ、山田は地上へと送り返された。

陸に上がると、まさに大混乱が起きていた。電気も水道もガスも止まり、人々は戸惑い、怒り、そして…一部の人々は、何かに気づき始めていた。

星空がこんなに美しかったこと。
川の音がこんなに心地よかったこと。
隣人と協力することの大切さ。

山田は思った。これは破壊ではない。再生への第一歩なのかもしれない、と。

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