隕石が落ちたその日から:第4話「生存者たちの集い」

サイエンスフィクション

前回の話

隕石が落ちたその日から:第3話「新たな脅威」
前回の話第3話「新たな脅威」球体が消えてから一週間後、世界各地で奇妙な現象が報告され始めた。植物が一夜にして巨大化する。昆虫が集団で規則的な模様を描いて移動する。鳥たちが意味不明な鳴き声を発する。「まるで、自然界がおかしくなったようだ」緊急...

第4話「生存者たちの集い」

政府機能が麻痺してから二週間が経った。

私は田中や山田教授と共に、山奥の廃校に身を潜めていた。ここには、約五十人の生存者が集まっていた。科学者、医者、教師、農家、様々な職業の人々。

「電磁波の影響を受けにくい場所を選んだつもりだが……」

田中が窓の外を見ながら呟いた。校庭の桜の木が、季節外れの花を咲かせている。花びらは虹色に輝いていた。美しいが、不気味だった。

夕食の時間、私たちは体育館に集まった。

「今日も、缶詰とクラッカーか」

若い女性がため息をついた。彼女は元看護師で、今は怪我人の手当てをしている。

「贅沢は言えませんよ。生きているだけで幸運です」

初老の男性が諭すように言った。彼は元自衛官で、この集団のリーダー的存在だった。

「そうだな。外では植物に食われる奴もいるんだから」

皮肉屋の青年が口を挟んだ。彼は元プログラマーで、今は手動の無線機を改良している。

食事の後、私は今日の観測結果を報告した。

「磁場の変動が激しくなっています。そして、新たなメッセージを解読しました」

皆が注目した。

「『適合者の選別中』だそうです」

「適合者?」

山田教授が眉をひそめた。

「おそらく、彼らの『改良』に適した人間を選んでいるのでしょう」

その時、体育館のドアが開いた。入ってきたのは、泥だらけの少年だった。

「助けて……」

少年は倒れ込んだ。看護師が駆け寄る。

「大丈夫? どこから来たの?」

「町から……皆、植物に……」

少年の背中を見て、皆が息を呑んだ。そこには、小さな芽が生えていた。

「隔離しろ!」

元自衛官が叫んだ。しかし、山田教授が止めた。

「待って。これは……共生かもしれない」

彼女は慎重に少年を観察した。

「芽は少年の生命活動と同調している。むしろ、少年を生かそうとしているようだ」

「まさか……」

私は気づいた。これが「適合者」なのか。

夜、私は一人で屋上に上がった。星空を見上げる。すると、見知らぬ女性が隣に立っていた。いつの間に……。

「美しい夜ね」

女性の声は、どこか懐かしかった。

「あなたは……」

「私? 私は元は東京にいた会社員よ。でも、今は違う」

女性が振り向いた。その瞳は、植物の葉のような緑色だった。

「怖がらないで。私は敵じゃない」

「適合者……ですか」

「そう呼ばれているらしいわね」

女性は微笑んだ。

「でも、私たちは選ばれたんじゃない。選んだのよ」

「選んだ?」

「共生することを。彼らと、この星と」

女性の髪が、風もないのにゆらめいた。よく見ると、髪の一部が細い蔦になっていた。

「あなたたちも、いずれ選択を迫られる。拒絶するか、受け入れるか」

「拒絶したら?」

「さあ、どうなるかしら」

女性は屋上の縁に立った。

「でも、一つ言えることがある。変化は、必ずしも悪いことじゃない」

そして、女性は飛び降りた。いや、飛んだ。背中から大きな葉が広がり、グライダーのように滑空していく。

私は呆然と、その姿を見送った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました