隕石が落ちたその日から:第3話「新たな脅威」

サイエンスフィクション

前回の話

隕石が落ちたその日から:第2話「混乱と避難」
前回の話第2話「混乱と避難」隕石が落ちたのは、予定より三時間早かった。衝突地点は太平洋上。津波警報が発令され、沿岸部の住民は高台へと避難した。私は天文台の地下シェルターで、モニターに映る映像を見つめていた。「直径は約五百メートル。被害は最小...

第3話「新たな脅威」

球体が消えてから一週間後、世界各地で奇妙な現象が報告され始めた。

植物が一夜にして巨大化する。昆虫が集団で規則的な模様を描いて移動する。鳥たちが意味不明な鳴き声を発する。

「まるで、自然界がおかしくなったようだ」

緊急対策本部で、生物学者の山田教授が言った。彼女は私の大学時代の恩師でもある。

「隕石の影響でしょうか」

私が尋ねると、彼女は首を振った。

「分からない。ただ、これは進化というより……プログラムの書き換えに近い」

プログラム。その言葉が、私の中で何かを呼び覚ました。

その頃、田中は別の異常を発見していた。

「地球の磁場が変動している。わずかだが、確実に」

彼のデータを見ると、磁場の変動は規則的だった。まるで、何かの信号のように。

「これは……モールス信号?」

私は慌てて解読を始めた。しかし、それはモールス信号ではなかった。もっと複雑で、もっと高度な通信方式だった。

翌日、最初の犠牲者が出た。

農家の男性が、巨大化したカボチャに襲われたのだ。いや、襲われたというより、カボチャに「吸収」された。警察が駆けつけた時、男性の体はカボチャと一体化していた。

「これは殺人事件なのか?」

警察は困惑した。カボチャを逮捕することはできない。

似たような事件が相次いだ。人々は恐怖に陥った。

「宇宙人の侵略だ!」

「いや、神の裁きだ!」

SNSは使えないが、口コミで噂は広がった。一部の人々は武装し、植物を焼き払い始めた。

政府は外出禁止令を出した。しかし、脅威は家の中にもあった。観葉植物が、ペットが、突然変異を起こす。

私は必死に磁場の信号を解読していた。そして、ついに一部の解読に成功した。

「第一段階完了。第二段階開始」

第一段階? 第二段階? まるで、計画的な……。

その時、研究室のドアが開いた。入ってきたのは、見知らぬ男だった。いや、男のように見えるが、何かが違う。目が、普通の人間の目ではない。

「お前は、信号を解読したな」

男の声は、機械的だった。

「誰だ?」

「我々は、お前たちが『隕石』と呼んでいるものだ」

私は息を呑んだ。

「正確には、その中にいた者だ。我々は長い旅をしてきた。そして、この星を見つけた」

「何が目的だ?」

「改良だ」

男は微笑んだ。その笑顔は、ひどく人工的だった。

「この星は可能性に満ちている。しかし、非効率的だ。我々はそれを改良する」

「改良だと?」

「心配するな。痛みはない。むしろ、お前たちは幸せになる」

男の体が、ゆっくりと透明になっていく。

「第二段階で、また会おう」

そして、男は消えた。

私は震えながら、解読の続きを見た。そこには、恐ろしい計画が記されていた。

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