前回の話

第7話「希望の手紙と新たな旅立ち」
目を覚ますと、田中は郵便局にいた。
しかし、何かが違う。窓から差し込む光が優しく、空気が澄んでいる。
「おはよう、新しい世界の配達員」
局長が微笑んでいた。その姿が、少し透けて見える。
「局長……まさか」
「私は前の世界の管理人。君に引き継ぎをしたら、私の役目は終わりだ」
田中は悟った。局長もまた、届けられるべき手紙だったのだ。
「でも、私一人では」
「大丈夫。見てごらん」
外を見ると、新しい配達員たちが集まってきていた。かつて闇の勢力だった者たちも、配達カバンを持っている。
「届けられなかった想いを知る者こそ、良い配達員になれる」
局長の体が、完全に光になっていく。
「最後に一つ。君宛ての手紙がある」
一通の手紙が、田中の手に渡された。差出人の名前を見て、田中は息を呑んだ。
それは、田中自身からの手紙だった。
『未来の自分へ』
震える手で開くと、短い文章が書かれていた。
『世界を救うなんて大げさなことじゃない。ただ、一通一通、心を込めて届ければいい。それが積み重なって、世界は回っている。
P.S. 給料は上がらないけど、やりがいは保証する』
田中は笑った。涙混じりの、晴れやかな笑顔。
「相変わらずブラックだな」
局長は最後に言った。
「郵便局は永遠に不滅だ。手紙がある限り」
そして、光となって消えていった。
新しい朝。
新しい世界。
新しい手紙たち。
田中は配達カバンを背負った。カウンターには、すでに配達待ちの手紙が山積みだ。
「さて、仕事を始めるか」
ドアを開けると、新米配達員が慌てた様子で駆け込んできた。
「大変です! 時計が逆回りして、切手が勝手に……」
「ああ、それは正常だよ」
田中は優しく言った。かつての自分を見るような気持ちで。
「この郵便局は特別なんだ。でも心配しなくていい。必要なのは、手紙を届けたいという気持ちだけ」
新米配達員の目が輝いた。
「はい!」
世界を救う郵便局の、新しい一日が始まった。
手紙は今日も世界を巡る。
希望と共に。
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