銀行で働く強盗:第6話「暴かれる真実」

サスペンス

現金輸送の三日前。

黒田は支店長室に呼ばれた。部屋には山田の他に、見知らぬスーツの男が二人いた。

「田中君、紹介しよう。警察の方々だ」

黒田の顔から血の気が引いた。

「実は、我々の銀行を狙う強盗団の情報があってね」
年配の刑事が口を開いた。
「内部に協力者がいる可能性が高い」

黒田は必死に平静を保った。

「それは…大変ですね」
「田中君、君は何か不審な人物を見かけなかったか?」

山田の目が、じっと黒田を見つめていた。

「いいえ、特には…」
「そうか」

刑事たちは資料を広げた。そこには、黒田の協力者たちの写真があった。

「この男たちに見覚えは?」
「ありません」

嘘だった。しかし、表情には出さなかった。

「分かった。もし何か気づいたことがあれば、すぐに連絡してくれ」

刑事たちが帰った後、山田は黒田に向き直った。

「田中君、実は君に相談がある」
「何でしょうか?」
「君を、この件の特別対策チームのリーダーにしたい」

黒田は絶句した。

「私のような新人が?」
「君の立てた警備計画は完璧だ。それに、君のような若い目が必要なんだ」

罠か、それとも本当に信頼されているのか。

黒田は受けることにした。もはや、後戻りはできない。

その日の夕方、鈴木が黒田のデスクに近づいた。

「田中さん、大丈夫ですか?顔色が悪いです」
「少し疲れているだけです」
「無理しないでくださいね。田中さんがいないと、私たち困りますから」

純粋な心配の眼差し。黒田は目を逸らした。

夜、黒田は最後の決断を迫られた。

協力者からのメッセージ。
『計画通り決行する。お前はどうする?』

黒田は返信をためらった。そして、ある決断を下した。

『計画は中止だ』

即座に返信が来た。
『裏切るのか?』
『そうじゃない。警察が動いている』
『関係ない。やる』

黒田は頭を抱えた。協力者たちは、自分の制止を聞かないつもりだ。

翌朝、黒田は山田に全てを話す決意をした。しかし、支店長室のドアをノックする手が震えた。

「入りたまえ」

中に入ると、山田は微笑んでいた。

「おはよう、田中君。いや、黒田君と呼ぶべきかな?」

黒田は凍りついた。

「いつから…」
「最初からだよ。君の経歴は完璧すぎた。完璧すぎるものは、かえって怪しい」

山田は立ち上がり、窓の外を見た。

「でも、私は君の変化を見ていた。君は本当に銀行員になろうとしていた」
「…」
「だから、チャンスを与えたんだ。君が自分で選択するチャンスを」

黒田は膝から崩れ落ちそうになった。

全ては見透かされていた。自分は、ただ踊らされていただけだった。

「私は…」
「君の協力者たちは、既に警察にマークされている。今日、彼らが動けば、即座に逮捕される」

黒田は理解した。もう、全ては終わっていたのだ。

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